孫権の兄、孫策も、ダメ上司の元から独立することで一族の未来を切り開きました。袁術は、後漢崩壊初期の最大軍閥、袁家の子息でしたが年長の同族袁紹と仲違いして独立。部下だった孫策(孫権の兄)は、何度も功績を立てますが、袁術は約束した地位を与えずに、孫策は独立を決意します。兄がダメ上司を見限ったことで、孫権は南方で独自勢力となり、のちの呉帝国を築く機会を手に入れています。
乱世は、古い権威が腐敗で崩壊する時期だと先にお伝えしました。そのような時代には、賞味期限が切れたダメなもの(組織・上司・地域)から離れる才覚がまず必要になるのです。三国志の時代、曹操・劉備・孫権のような英雄が台頭した一方で、腐った大木に最後までしがみ付いて共に消滅していった人物も、星の数ほどいたのですから。
時代の転換点で生き方を変えるのは、自らの志を胸に立ち上がる英雄たちばかりではありません。No.2タイプ、三国志の当時は参謀や軍師として活躍する者たちも、自分が参加すべき集団を、目を凝らして吟味していました。どれほど自分の才能や頭脳に自信があっても、集団を指導するリーダーがダメでは、宝の持ち腐れだけでなく、将来的な身の危険まであるのですから。
「離れる力」を発揮した者が勝利者になる
曹操が天下人となるきっかけを作った荀イクは、「王佐の才」を持つと言われた賢者でした。王佐の才とは、帝王を輔佐する器という意味です。彼は最初、最大軍閥のトップだった袁紹に仕えますが、すぐに見切りをつけて曹操陣営に一族とともに走っています。袁紹という見栄えは良いが中身は優柔不断のトップの下では、自分の才能が花開かず、大きな成功を手にすることは不可能だと悟ったからです。