日本の二大タオル産地の1つ、大阪府南部の泉州地域にある神(しん)藤(とう)タオル(泉佐野市)は従業員22人ながら、来年、創業110年を迎える。そんな老舗を支える社長は就任3年目の弱冠30歳。国内のタオル業界は中国などの安い海外製に押されるなか、神藤タオルは伝統に培われた技術を大切にオリジナル商品を展開し、祖父の亡き先代社長の思いに応えようと奮闘している。(藤谷茂樹)
ベテランの業(わざ)
ガシャン!ガシャン!
十数台の織機が、けたたましく音を響かせる工場。奥の一角で、明治40(1907)年創業の老舗、神藤タオルが独自展開するタオル「インナーパイル」が次々と織り上がっていく。
ガーゼの間にパイルをはさんだ構造が特徴で、その柔らかな風合いは高速で動く新しい織機では出せない。それゆえに30年以上前に導入したシャトル織機を今も動かしている。
内側にパイルが隠れるため、出来の見極めはベテラン従業員の日根野谷徳広さん(76)の感覚が頼りだ。織り上がった布に手をあて確かめると、「他のどこにもない製品を作れている」と自信たっぷりだ。
ただ、そのシャトル織機はすでに生産中止。故障すれば修理はままならず、8台のうち1台を交換部品用の予備にして動かしていない。