「この社内共有へのプロセスで言葉を介さずに分かりあえることは、あまりに少ないです」と篠田さんは続ける。
しかしながら、「ほぼ日」に毎日糸井重里さんが書いているコラム「今日のダーリン」を読んでいると、「ほぼ日」は120%の言葉を尽くすより、70%程度に言いとどめている印象がある。言葉で伝えきれない大切なことが多い、と。
その他の記事も難しい漢字が少ない。視覚的イメージを浮かべやすい、目に優しい文章が並んでいる。社内で練り上げた話し合いを、言葉の羅列で伝えようとはしていないように見える。言葉の大切さと、あえて引き算の伝え方。言葉と文脈に繊細であり続けることで、読者はハマっていく。
「文脈を解さないいい人というのは、ありえません。文脈をよく分かり動ける人が、いい人なのです」と篠田さんは言葉を結んだ。
企業の社会的立場が問われる。が、ヨーロッパ諸国では、「ビジネスは社会に有益であるべきだ」と500年も前から言われてきた。日本にも近江商人の「三方よし」という考え方もある。「ほぼ日」のあり様と重なる。
いい人たちは「会社で働く」という常識を国津罪も天津罪もないように変えていけるのではないか。(安西洋之)
筆者がモデレーターを行うセミナー「今、欧州ではデザインとイノベーションをどう考えているか?」が9月3日に開催されます。詳細は以下をご覧ください。
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【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)
上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。