ぼくはEUの推進する中小企業向けデザイン導入教育について話したが、そこで強調したのは次の点だ。
この教育プログラムを進めるEUの公式文書をみると、「デザイン・シンキング」「ユーザー中心設計」「デザイン・ドリブン・イノベーション」など、複数のアプローチを総合的に捉え、デザインの考え方を公的機関や民間企業に定着させていくと書いてある。非デザイナーで非技術者が主たる対象だ。
実際のプログラムでは、上記のそれぞれのアプローチを教える内容になっている。
ミラノ工科大学でデザインを教えるアレッサンドロ・ビアモンティさんは、アングロサクソン流「デザイン・シンキング」とイタリア流「デザイン・シンキング」の違いを指摘した。
アングロサクソン流は段階を踏むことを重んじるが、イタリア流は直観的である。あるいは政治的な正しさをアングロサクソン流は押し出すが、イタリア流はルールから外れることに価値をおく。何よりもアングロサクソン流はスケールサイズが大きく、イタリア流は中小のサイズと相性が良い。
デザインの考え方は、文化に依存するところが大きいというわけである。
ところが文化依存性が高いとか、コンテクストによる部分が大きいというと、お手上げ状態になってしまうという人が少なくない。面倒なのだ。