【書評】『マイルス・デイヴィスが語ったすべてのこと　マイルス・スピークス』

　■５年もの取材を時系列に編集

　今年はジャズの帝王の生誕９０年、没後２５年にあたる。マイルスには本人が語りおろした自伝もあるが、本書は格好つけた自伝以上に素顔の彼をとらえている。

　ジャズ・ジャーナリストにして整形外科医でもある著者は、１９８５年に初めて会ったおり、股関節手術の後遺症に苦しんでいた彼にリハビリのメニューを提供することで強い印象を残す。以降、自宅や楽屋、滞在先のホテルで２０回近くも取材することに成功、音楽観や人生観を軸に率直な言葉を引き出す。

　５年にわたる取材を時系列に編集した本書からは、紛れもない彼の肉声が聞こえてくる。（小川隆夫・著／２７００円、河出書房新社）