□三菱UFJモルガン・スタンレー証券 景気循環研究所 宮崎浩シニアエコノミスト
今春闘は、ベースアップ(ベア)が昨年の0.27%(経団連集計)を若干上回るだろう。景気が上向く可能性があるためだ。ただ、トランプ米新大統領の就任で為替相場が不安定になれば経営環境に不透明感が増し、経営側は思い切った賃上げに踏み切れなくなる恐れがある。その場合は、小幅な上昇にとどまるとみられる。
景気の先行きを示す最近の指標には明るいものが多い。景気ウオッチャー調査で2~3カ月先の見通しを示す先行き判断指数は、2016年10月以来3カ月連続で好不況の判断の分かれ目となる50を上回るなど好調な状況が続いている。
加えて海外の景気が良いことから、日本国内で自動車を中心に輸出や生産が好調であることも交渉では組合側に追い風となるだろう。
「働き方改革」はベアを求めるものではないが、長時間労働を是正しようという動きが社会全体に強まっている。ベアが重視されるか、ボーナスで還元されるかは経営側の判断になるが、深刻な人手不足でもあり、労働者側の要求が反映されやすいという今春闘の特殊事情がある。
連合は定期昇給を含めて4%程度の賃上げ要求を決定した。昨年と同じ水準だ。組合側の要求が横ばいで景気が上向きであれば、賃上げ額は昨年を上回りやすい局面となる。