PCをインターネットに接続することで、電子メール、ホームページ、ブログ、SNSなどネット上で様々なコミュニケーションが行なえるようになりました。さらにインターネット上で、買い物もできるようになりました。便利な世の中になりましたね。
しかし、インターネットの利用者が増えてくると、それを悪用しようと考える人も出てきます。他人のコンピューターに侵入して悪さをする、ハッカーやクラッカーと呼ばれる人たちです。ホームページの改ざんに始まり、今ではクレジットカードの情報を盗んだり、企業の機密情報を漏洩したりするなど社会的な事件も起こしています。
2013年6月、ひとつのニュースがインターネット時代に警鐘を鳴らしました。「NSA(アメリカ国家安全保障局)が世界中のインターネットや電話回線を傍受している」。エドワード・スノーデンがNSAから機密書類のコピーを持ち出し、アメリカ政府を告発したのです。
スノーデンの告発を裏づけるようなエピソードも伝わります。ドイツのメルケル首相の携帯電話が盗聴されているのではないかという疑念に対し、オバマ大統領が「もうしません」と答えたのです。つまり、それまでは盗聴していたということを暗に認めたのです。
日本にも米軍三沢基地(青森県)にNSAの関連施設があります。上空から見ると、白いゴルフボールのような施設が確認できます。ここで日本周辺国(ロシア、中国、北朝鮮)の軍事無線などを傍受しています。私たちの携帯電話の通話やメールなどもすべて、収集されていると考えていいでしょう。
世界中のお金持ちを震撼させた「パナマ文書」も流出にいたる詳しい経路はわかっていませんが、インターネット上に公開されたことで、税金逃れの実体が公になりました。インターネット時代は、国際社会を舞台にした情報戦争の時代とも言えるのです。
【用語解説】
ハッカー/クラッカー
ハッカーは、コンピューターやネットワークシステムに侵入し、内側を覗くことができる高度な技術を持った人。システムの改ざんや破壊など悪意を持って不正行為を行なう者はクラッカーと呼ばれ、ハッカーとは区別される。
NSA(アメリカ国家安全保障局)
アメリカ国防総省の諜報機関。通信傍受、盗聴、暗号解読などの「信号諜報」の技術開発と情報収集・分析を担う。余談だが、アメリカの大学生の人気就職先ランキングでは、上位(文系9位/2013年)に入っている。
エドワード・スノーデン
元CIA職員で退職後に民間企業からNSAに出向。アメリカ政府による極秘情報収集活動の実態を知り、香港で数か国のメディアに対し、告発。国家反逆罪で指名手配される。ロシアへの亡命を申請し2014年に3年間の期限付き居住権を与えられた。
三沢基地
青森県三沢市にある米軍基地。アメリカ空軍の戦闘機部隊が駐留する。ゴルフボールのような形の施設は、通信傍受用のパラボラアンテナの形状や向きを隠すためのもの。
パナマ文書
タックス・ヘイブン(租税回避地)での会社設立を手がけているパナマのモサック・フォンセカ法律事務所から、内部文書が流出。世界中の企業や著名人などによる税金逃れの実態が明らかになった。アイスランドの首相は辞任に追い込まれ、ロシアのプーチン大統領やイギリスのキャメロン前首相の名前も挙げられた。ちなみにタックス・ヘイブン(Tax Haven)であり、ヘブン(Heaven=天国)ではない。