村上春樹の新作「騎士団長殺し」どう読んだのか? ハルキストや批評家に聞いた (1/3ページ)

村上春樹さんの新刊を買い求める人たち=2月24日午前0時、東京・神田の三省堂書店神保町本店(春名中撮影)
村上春樹さんの新刊を買い求める人たち=2月24日午前0時、東京・神田の三省堂書店神保町本店(春名中撮影)【拡大】

  • ナカムラクニオさん
  • 早稲田大准教授の市川真人さん。

 先月24日に発売された人気作家、村上春樹さん(68)の4年ぶりの長編小説『騎士団長殺し』(新潮社)の反響が広がっている。事前に内容を明かさない出版元の戦略も奏功し、全2冊で1000ページを超す大部ながら、計130万部を発行。インターネット上には愛読者が率直な感想を書き込んでいる。熱心なファンである“ハルキスト”や批評家は話題の新作をどう読んだのか?

映像ディレクターで村上春樹研究家・ナカムラクニオさん

村上春樹的「読むオペラ」

 ようこそムラカミワールドへ-。そんなキャッチフレーズがよく似合う「騎士団長殺し」。喪失と回復をテーマにした異世界をめぐる冒険で、おなじみの「行きて帰りしの物語」。妻の喪失、井戸、高級車、クラシック音楽など、ハルキ的キーワードが続々と登場し、まるで村上春樹のベストアルバム。ロールプレーイングゲームのようにメタファー(隠喩)の宝探しや謎解きを楽しめる大人のファンタジー小説だ。

 新しい部分といえば、登場人物が画家という設定。3年前に亡くなった親友、安西水丸さんへのレクイエム(鎮魂歌)か? また仏教的なシーンも登場し、僧侶であった村上氏の父親のことが思い起こされる。

現代を描けぬ感傷的な声