会社員にはつきものの「転勤」が、子育てや介護をしながら働く人の壁になっているとして、制度を見直す企業が増えてきた。転勤を断っても昇進にマイナスにならないようにする一方、応じた人には手当を厚くして、不公平感をなくすといった取り組みだ。国も企業向けのガイドライン作りを進めている。
◆「うちもそうだ!」
「育児を理由に転勤を拒否する女性が多く、人が回らない。男性に負担が集中して不満が出ている」。昨年11月下旬、中央大大学院(東京都千代田区)のプロジェクトが都内で開催した転勤制度に関するワークショップ。5~6人ごとに分かれたテーブルの一つで男性がこう語ると、「うちもうちも!」と周囲から声が上がった。
参加した男女約60人は、企業の人事担当者。「転勤もいとわず働いてきた女性が、限界を感じ、結婚・出産を機に辞めてしまう」(製造業)、「共働きが増え、妻が転勤する夫を支えられなくなった」(小売業)、「拒むと、昇進できないガラスの天井がある」(住宅メーカー)-。各自が社内事情や思いを打ち明け合った。
◆昇進など処遇同じ
労働政策研究・研修機構の企業調査(従業員300人以上)では、「正社員のほとんどが転勤の可能性がある」が34%で、過去1年間で女性が国内転勤した企業は46%。