【IT風土記】栃木発 味は絶品、高級・完熟イチゴを海外に 新たな市場を広げる自動収穫ロボットの可能性 (2/3ページ)

 東南アジアでの県産イチゴの輸出を手掛けるユーユーワールド(宇都宮市)の手塚靖・営業企画開発推進室長は「日本のイチゴを試食してもらうと、『これが本当にイチゴ?』とびっくりされる。価格は高いのですが、富裕層を中心に購入してもらってます」と手ごたえを感じている。

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 スカイベリーに限らず、日本のイチゴには輸出は向かない独特の性質がある。海外のイチゴに比べ傷みやすく、日持ちがしないという点だ。日持ちができるように輸出できれば、輸出拡大の大きな足掛かりになる。その課題に取り組んだのが宇都宮大学でロボット工学を研究する尾崎功一教授だ。

フレシェルの容器に入ったスカイベリーと尾崎功一教授

フレシェルの容器に入ったスカイベリーと尾崎功一教授

 「ヘタについているつる枝が長いと傷みにくい。イチゴ農家にはそんな都市伝説のようなものがありました。なぜか分からなかったのですか、どうも生物学的な理由はなくて、農家の人たちが茎をつかんで収穫するので、果実のダメージが少ないというのが結論でした」と尾崎教授は語る。

 水耕栽培のイチゴ農場内をプランターや障害物などにぶつからずに自走。プランターから垂れ下がったスカイベリーの実の完熟度をカメラで検知し、収穫時期を迎えた実をみつけると、はさみを伸ばし、実の着いたつる枝の部分をカットする。切っても実は落ちず、はさみの部分にとどまり、持ち運ぶ-。県の産官学連携事業でロボットを試作。

イチゴの自動収穫ロボットの試作機

イチゴの自動収穫ロボットの試作機

 さらに農学部の柏嵜勝准教授とも連携して、店頭まで果実に触れないように包装する専用容器「フレシェル」を開発した。台座につる枝をくくりつけてイチゴを固定し、ドーム状のふたをしてパッケージする仕組みで、しっかり固定されたイチゴは少々振ってもドーム状のふたに触れることはない。この容器を使うことで、通常ではありえない完熟状態のイチゴの出荷が可能になった。「完熟状態でも10日以上傷みません。条件がよければ1カ月近く持つこともあります」と尾崎教授は胸を張る。

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