□一橋大学名誉教授・石弘光
世界の先進諸国の中で日本の人口高齢化は最も早く進み、本格的な高齢社会となってきた。全人口の65歳以上の割合は、2015年に26.7%に達し35年に33.4%、60年に39.9%まで上昇すると見込まれている(国立社会保障・人口問題研究所の推計)。
高齢社会の到来は、日本の経済社会にさまざまな影響を与える。その中でもおそらく最も深刻なのは、医療そして介護の問題であろう。というのも人は誰でも年齢を重ねると体が弱り、病気がちになり医療・介護施設のお世話になるからである。たとえば厚生労働省の年齢別1人当たりの医療費(13年度)で見ると、40~44歳世代は16.9万円なのに対し、65~69歳世代は45.4万円、80~84歳世代の場合は92.2万円と一気に跳ね上がる。この他に、高齢者のみに特有な介護費がかかることになる。
このような医療・介護サービスを確保するために、わが国おいては公的な保険制度を作り上げてきた。1961年に職域保険と地域保険を組み合わせた医療の国民皆保険が、そして2000年からはそこから独立させた形で介護保険がスタートした。さらに08年から75歳以上の高齢者をグループ化した後期高齢者制度が創設された。このような制度は、全面的に社会保険方式に依存するのでなく、その半分近くを公費(税財源で賄われる負担)で賄うという、両方をミックスした形でこれまで維持され、成長を続けてきた。