「古典」が長い時代を生き抜いてきた理由　分業のレベルと普及の差 (3/3ページ)

　前述したように、チームの力を否定的に捉えているのではない。１人でできることなど限られている。１人の頭でぼんやりと考えていることをカタチにしていくには、他人の視点や精神的な支えはどうしても欲しい。１人の人間を潰すのは思いのほか容易だ。

　だからといって複数の人間が集まるチームの一人一人が、自分の役割に「閉じこもる」のはチームを強くしない。どうしても「最初に自分ありき」の精神が求められる。

　どうして、今さら、こんなことを言い出したのか。それは芸術であれ思想であれ、古典が恐ろしく長い時代を生き抜いてきた理由は何だろうか、とふと思ったからだ。

　もちろん古典は結果であり、誕生した時代に古典であったわけではない。彼らは今の時代の人間と比べて格段の差の能力があって、３６０度を見渡す視野をもっていたのだろうか。

　いや、そんなことはないはずだ。違いは分業体制のレベルと普及の差しかないのではないか。（安西洋之）