黙々と出発準備を進めていた整備士が、足早に通り過ぎつつ早口でこう言った…気がした。「機関車は日本製ですよ!」ニュージーランド人はきれいな英語を話す人も多いが、地方や話し手の世代によっては聞き取りづらいこともある。特に高齢の男性に独特のアクセントがある場合があり、整備士もそのひとりだった。えっ。反射的に聞き返すと、彼は大きな声で言った。「ミーツビーシ!」。
タイエリ峡谷鉄道の本日の編成は、1968年の三菱重工製DJ型ディーゼルエレクトリック機関車2両が重連でジェネレータと4両の客車を牽引する。冬のオフシーズンにはこの編成が一般的だが、夏の書き入れ時には客車を最大20両まで連結することもある。1968年に60両を購入し、現在は8両が現役で活躍している。
ニュージーランドの鉄道は、軌間が狭軌(1067mm/3フィート6インチ)で日本のJRの在来線と同じこと、1879~1891年に敷設された峡谷鉄道の10のトンネルを通過できるほど車体がコンパクトなこと、線路への負荷が少ない軽量なボディで電気効率がよいのに馬力があることなどが理由で、いまもタイエリ峡谷鉄道の運転士から愛されているという。「けれども一番の理由は、日本製品に対する信頼ですね」と整備士。