「モデル」が見えない不安に束縛されない 世界の経営史から考える  (3/3ページ)

 ぼくはイタリアの経営学者に聞いてみた。

 「日本の場合、1970年代後半から1990年代の前半にかけ世界の隅々でMade in Japanのブランドが語られ、同時に日本の経営方法も注目を浴びた。そして1990年半ば以降、どちらも早いスピードでグローバルな視野から消え去った。一方、Made in Italyというブランドは急伸しているにも関わらず、イタリアの経営は参照されていない。どうしてイタリアマネジメントはモデルにならないのか?」

 経営学者の回答にはいくつかの要因が記されていた。おなじみの「イタリアには経営モデルを体系化する土壌がない」という理由もある。(マキャベリ『君主論』を生んだ国にも関わらず、これを文化土壌として言いやすいのはなぜだろうか)。しかし家族経営の中小企業のブランドや製品が市場の華だった状況で、体系化が可能だっただろうか?

 体系化を不得意として弁解するより、体系化しづらい環境にあったとしか言えないのではないか。20世紀初頭の英国における経営の高等教育への距離感と同じような理由があった、と言えるのではないか。

 現在、大企業だけにモデルを求める不自然さが指摘される。こうしてますます体系化とは離れ、「体系化しない体系化」という禅問答のような世界に入りつつある。

 20世紀初めの米国のダントツの強さの背景をもう一度考えるのは、21世紀の現況を再考するために有益だろう。モデルがない不安を解消するにも役立つ。モデルなんていつの時代にもないのだ、と思うのが良さそうだ。(安西洋之)

【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)

安西洋之(あんざい ひろゆき)上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『デザインの次に来るもの』『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)フェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih

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異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。