定年延長 人件費増加で二の足踏む実情も (1/2ページ)

定年延長を決めた主な企業
定年延長を決めた主な企業【拡大】

 人手不足や技術の継承を促進したいという企業と、できるだけ長く働きたい働き手のニーズを背景に定年を延長する動きが広がっている。

 生命保険業界では、既に明治安田生命保険が7月に65歳までの定年延長を決めた。「30代が少なく、10年後を見据えると管理職層が不足する可能性があった」ためだという。定年後は嘱託として1年ごとに契約を更新しなければならなかったが、65歳まで雇用が保障されることになり、給与も嘱託の場合に比べて約2倍に増える。勤務地も本人の希望をできるだけ優先する方針で、ベテラン社員の意欲を後押しする。

 大和ハウス工業も定年を65歳とした上で、定年後も無期限で働き続けられる再雇用制度を導入した。「技術の継承が主な狙い」(担当者)だ。定年後の給与は20万円だが、年金と合わせるとそれまでの給与と同水準の設定とした。

 厚生労働省の調査(従業員31人以上の約15万3000社対象)によると、昨年6月時点で定年を引き上げた企業の割合は16.1%で引き上げる企業は「今後も増加していく見通し」(同省)。

 だが、8割以上の企業は定年後に嘱託社員などで再雇用する仕組みにとどまる。定年延長は企業にとっては総人件費の増加につながりかねないためだ。政府は定年を延長した企業への助成制度も始めたが、多くの企業が二の足を踏んでいるのが実情だ。(蕎麦谷里志)

定年延長を決めた主な企業