親になることで幸福感が損なわれる「親ペナルティ」 40歳からの子育てに覚悟はあるか (2/5ページ)

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 「親ペナルティ」とは、まさに米国で共働き化が進行したにも関わらず政府の子育て支援の“手薄さ”によって最大化する、子育てのしづらさ、親としての生きづらさに起因して顕在化したものだ。まして価値観の「共働き社会化」さえ進まない日本においては、親ペナルティの重さたるや、いかほどか。

 いま、その親ペナルティを晩産傾向や不妊のために40代で負う人たちが少なくない。さて、余計なお世話と重々承知しつつ、今回の「脳内エア会議」のお題は、「経済的、キャリア的に成熟し自立した40代で負う親ペナルティは、20代・30代に比べて軽くなるだろうか、それとも重くなるだろうか?」です。

 保育園へ向かう坂道

 私の家の前の坂道は、地域でも評判のいい、丘の上の保育園へと通じている。平日の毎朝、自営業者の私がそろそろメールチェック(やネットショッピングでの無駄遣い)でもしようかとノートパソコンを開ける頃、開けた窓から小さな子供と、その子を前かごに乗せた自転車をうんうんと押して坂道を登っていく母親の会話が聞こえてくる。

 「あのね、○○君は玉ねぎが嫌いだけど、僕は食べられるんだよ」「そうね、玉ねぎ入ってても大丈夫だもんね。じゃあ今日の夜はハンバーグにしようか。夕飯まで楽しみに待っててね」「うん、僕ちゃんと待ってるよ、夜のおやつのあとは先生と○○君とお絵描きしてる」

 ああ、今日はあの男の子の調子が良くてよかったね、大きくなったなぁ、そんな風にそっとエールを送りながら、私は名前も知らない親子を心の中で見送る。1年前、その子は母親と離れたくなくて毎朝大泣きしていた。自転車に乗せられた男の子の鳴き声がだんだん近づいて、やがて坂道を登って遠ざかっていくのを、「救急車のドップラー効果みたいだなぁ(違うけど)。お母さんも男の子も、頑張れ」と思って見送っていた。

 お母さんは40手前くらいで、小柄で落ち着いたひとだ。いつも私がひそかに感心するほどの冷静さと、論理的ながら子供の気持ちを巧みにくみ取る会話で、男の子の情緒を安定させて平和な朝を送っている。時々、おばあちゃんや、40代と思われるお父さんが送る朝もあって、お父さんは少々不慣れなのかえらく冗舌で、なんだか説得めいている。「○○君、今日は保育園頑張ってね。先生の言うことをちゃんと聞いて、お友達と仲良くするんだよ。給食もなるべく残さないようにしようね。パパもお仕事頑張ってくるからね」と。

「子供を泣かしっぱなしにする親はマナー違反で無責任」だと?