大ベストセラー「嫌われる勇気」に広がる誤解 リーダーこそ間違いやすい解釈 (4/5ページ)

『アドラーをじっくり読む』岸見一郎著中公新書ラクレ
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 閉じられた組織は行き詰まる

 新卒一括採用、終身雇用の時代では、会社へすべてをささげることが、一つの人生のモデルだったのはたしかでしょう。しかし、会社という一つの共同体への貢献は、それを失った途端に人を空虚な存在にしてしまいます。モーレツ社員だったサラリーマンが定年退職後に行きどころを失ってしまうのも、そのためです。

 ところが、アドラーがゲマインシャフトという言葉を使う時、その意味は既存の共同体ではなく、外へと広がっていく共同体です。内部では一体感があるけれども、外に対しては閉鎖的であるという普通の意味でのゲマインシャフトではないのです。

 生き方が多様化した今、一つの共同体だけへの貢献は、外部には敵対的であることを助長し、その意味でそのような貢献は危険なものになります。

 新卒採用でも、会社に忠誠を誓う人材を選んでいては、今後組織は行き詰まってしまうのではないかと思います。

 以前、旅行代理店で講演をしたことがありましたが、その日はたまたま新入社員の面接試験の日でした。面接を待つ学生の中に、アジアの民族衣装を着た人がいました。その企業の社員と講演後に話したところ、「あの子はとらない」と断言しました。「奇をてらった人間はいらない」ということです。企業へどっぷりと忠誠を誓う人間しか採用されない--それでいいのでしょうか。

 押し付けられた「貢献」にだまされてはいけない

 共同体に貢献することはあくまでも自分の問題です。組織のリーダーが貢献感を部下や従業員に持たせようとするのであれば問題です。残念なことに、過重労働による自殺や、病気についてのニュースがあとを絶ちません。「死ぬくらいなら辞めればいい」と言えば、話はそんなに簡単な問題でないと言われます。特定の「共同体」へ貢献することが、その人のすべてを作ってしまうという日本人のキャリア形成の構造的な問題が背景にあるからです。

 リーダーが恐怖に基づいて貢献を強いるのであれば、それがおかしいことに気づくことは容易かもしれませんが、話が厄介なのは、部下に自発的に貢献するように仕向けることがあるからです。

「私はやれとは言ってない、あくまでも部下が自発的に貢献しようとしたのだ」

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