作家、山本周五郎の未発表の未完小説草稿見つかる 完成度追求する巧者の葛藤伝える

山本周五郎による小説「註文の婿」の草稿(神奈川近代文学館提供)
山本周五郎による小説「註文の婿」の草稿(神奈川近代文学館提供)【拡大】

  • 山本周五郎=1960年、横浜市(秋山青磁撮影)

 作家、山本周五郎(1903~67年)が生前に発表していない未完の小説「註文(ちゅうもん)の婿」の草稿が見つかった。江戸が舞台のユーモア時代物で、最晩年まで自作の完成度を追求した小説巧者の葛藤も伝わる貴重な資料。30日に神奈川近代文学館(横浜市)で始まる「没後50年 山本周五郎展」で初公開される。

 同館によると、草稿は200字詰め原稿用紙44枚に万年筆で書かれていた。周五郎が死去する1年半ほど前、「小説新潮」の担当編集者が本人からもらい受けていた。平成27年に同館が寄贈を受けて調査。既刊で類似の作品が見当たらず、未発表作だと判明した。

 面倒な職務から逃れたい一心で、養子を迎え、隠居しようと企てる藩の国家老の姿をユーモラスに描く物語。主人公が待望の余生を謳(おう)歌(か)し始めるところで、意外なオチの予感を漂わせつつ、筆は絶たれている。

 執筆時期は不明だが、草稿を渡したころの周五郎は体力や気力が衰え、身辺整理をしていたともいわれている。ただ、文芸評論家の清原康正さんは「後で仕上げる気持ちがあり、自宅でほかの原稿に埋もれて紛失しないように編集者に託した可能性もある。キャリアを積んでも安易なオチは書かず、高い完成度を求めて悩み苦しみ続けた作家の真(しん)摯(し)な姿も浮かぶ興味深い資料」と話す。草稿の全文は16日発売の「新潮45」10月号にも掲載される。

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