イタリア人はなぜ遅刻するのか? 日常生活のなかで観察を促す幼児教育 (1/3ページ)

【安西洋之のローカリゼーションマップ】

 かつて本に「イタリア人はなぜ遅刻するのか」というエッセーを書いたことがある。理由は2つ挙げた。

 まず約束の時刻とは、前後5-10分程度の許容をもって決めていることが多い。ちょうど時計の針を真正面から見るのではなく、斜め方向から眺めるような時間感覚である。

 もう1つは、約束の時刻に遅れそうであっても、アポイントの場所へ向かう途中、街中で何らかの発見をすればそれをよく観察しようとするからだ。通りの反対側のショーウインドーに目を引くものがあれば、道を渡ってしまうのである。軌跡はまっすぐではなくジグザグになる。

 遅刻するようなロジックが成立している。

 このエッセーをふと思い出したのは、東京・代官山で開催されたレッジョ・エミリア・アプローチのシンポジウムで質疑応答を聞いている時だった。

 レッジョ・エミリア・アプローチとは人口17万人のイタリアの都市で実施されている乳幼児教育である。およそ40年前にスタートしたこの教育は、地元だけではなく世界100か国以上に普及し、34か国にネットワークの拠点がある。

 日本でも注目されており、ぼくが出かけた教育関係者を対象とした回にも300近くの人が集まっていた。その会場から次のような質問がでた。

「この幼児教育がスタートしてそれなりの時間がたち、大人の年齢に達している。一方、イタリア経済が好調には見えない。一体、どういう大人になって欲しいと考えているのか?」

「子供たちに多くの可能性を提供する」