ノーベル賞受賞者も動かすホワイト企業 「わけあり社員6割」で成り立つ方法 (3/5ページ)

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  • アップライジングの齋藤幸一社長

 現在までに採用から1年2カ月がたった。実は入社3カ月後には1週間の無断欠勤があった。奈津美さんはアパートのドアをたたいて「何しているの? ごはん食べたの?」と問いかけ、職場に引っ張り出したという。そんなことの繰り返しで、最近では仕事や仲間との関わりにも前向きになってきたそうだ。

 養護施設出身という別の青年は、付き合っていた彼女に給料を搾取されて4日間も食事をとっていないとわかった。奈津美さんは彼を守るために給料の管理をし、彼女と直談判して別れさせ、目の前でLINEの連絡先も削除させた。ときに奈津美さんは社員間のトラブルも仲裁し、それぞれの悩みを受け止める。相手の心によりそい、物心両面で支える姿は家族以上にみえる。

 (2)技能実習生のために現地法人設立を準備

 同社では6人のベトナム人技能実習生がタイヤ・ホイール修理の現場で働いている。技能実習は、母国にない技術を日本で勉強して持ち帰るのが目的だ。しかし日本の現場労働力不足を補うため、低賃金で、時間を超えて働かせる職場が後を絶たない。

 「それは悲しいですよ。本来あるべき技能実習生の教育をやりたいと僕は思っています。彼らが国に帰った後、技術・知識・経験に加えて日本の道徳を広げていくようでなければ」(齋藤社長)

 齋藤社長は、技能実習生を社員旅行へ連れていき、食事会にもひんぱんに招いているという。ベトナムには、まだアルミホイールの修理や塗装業は少ない。齋藤社長は彼らのためにその拠点を作ろうと、来年春をめどにベトナム進出を計画しているという。

 東日本大震災と公益資本主義が考え方を変えた

 もともと、齋藤さんは作新学院高校、法政大学のボクシング部で主将を務め、全国高校選抜大会ライトウェルター級チャンピオン、オリンピック代表候補指定強化選手にもなり、プロボクサーとして活躍した。

 24歳でプロ引退後は、健康食品販売を手掛けた。最初は「金持ちになりたい」「自分がいいと思った商品だから売れるはず」と思うあまり、友人知人に営業の電話をかけまくったが、相手にしてもらえず、仕事はうまくいかなかった。

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