ノーベル賞受賞者も動かすホワイト企業 「わけあり社員6割」で成り立つ方法 (4/5ページ)

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  • アップライジングの齋藤幸一社長

 その後、父親の借金も背負い、月60万円の返済に追われ、牛丼店とキャバクラのボーイの掛け持ちをしながら極貧生活を送った。栄光から転落し、ハングリー精神だけが生きるよりどころだった。

 14年前に家族で廃品回収業を始め、その後、アルミホイールと中古タイヤ販売に特化し、2006年に有限会社アップライジングを設立。しかし父親とけんかの末断絶してしまう。インターネットオークション販売が軌道に乗り、やがて実店舗を持とうと考えた齋藤さんと、インターネット販売の特化を主張する弟とも激しく対立。弟が同業店を出し、親兄弟で争う事態になった。

 それでも、がむしゃらに仕事をしたおかげで、借金を完済し利益が出るようになった。その報告を兼ねて、前の仕事で世話になった恩人のもとに奈津美さんを連れて会いに行った。そこでつい弟への恨みが口をついて出た。

 「ライバルと物の取り合いになって争っていたら楽しくないよ。弟を許してやりなよ」

 こう恩人に戒められて、齋藤さんは我に返った。

 「それからは、人のよい面を見て許せるようになり、弟とも和解し、会社の雰囲気も少しずつ良くなってきました」と振り返る。父親も病気となり、それをきっかけに許すことができた。

 さらに、劇的に変わったのは、東日本大震災の被災地支援だった。友人の飲食店主から炊き出しに誘われ、被災地でラーメンをふるまった。どんぶりを受け取ったおばあさんが涙を流して喜んでくれたことに、斎藤さんは心を深く揺さぶられた。人の喜びが自分の喜びに変わった瞬間だった。

 その3年後には、ベンチャーキャピタリストの原丈人氏やフォーバル会長の大久保秀夫氏が唱える「公益資本主義」の考え方に出合う。会社は株主のものでもあるけれども、まず従業員、取引先のものであり、地域社会、そしてお客さまのもの。株主、経営者は最後の最後。一番大切にしなくてはいけないのは従業員だ、という考え方である。

 自己利益は捨て、人の喜びが自分の喜びに変わる、「自利利他」「忘己利他」の経営。齋藤さんも大きな影響を受け、しかも、人がまねできないレベルへ猛進していったのだ。

ノーベル賞の受賞者も動かす