ノーベル賞受賞者も動かすホワイト企業 「わけあり社員6割」で成り立つ方法 (5/5ページ)

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  • アップライジングの齋藤幸一社長

 「利他の心」がグラミン銀行も動かした

 齋藤さん夫婦の捨て身の真剣さに従業員も徐々に感化されていった。今では地域での交通安全の見守りやあいさつ運動、駅前の掃除活動などにも積極的に参加する。

 「給料はこの地域の中小企業の平均くらいで決して高くはない」と齋藤さんは言う。しかし、恐ろしく手間のかかる“心の報酬”を、二人で惜しみなく注いでいる。その姿勢が従業員のモチベーションを高めているのだろう。

 社内だけでなく、恵まれない子供たちにも目を向け、タイヤ1本に付き20円をカンボジアやアフリカに寄付している。公益資本主義の考え方に出合ってからの3年間、 自利利他の経営を心がけたことは、周辺に波紋となって大きく広がっている。

 今年2月に齋藤さんは、リサイクルタイヤの活動を通じて、グラミン銀行創設者のムハマド・ユヌス氏と語り合う機会を得た。ベトナムでの計画に大きく共感したユヌス氏の申し出により、バングラデシュでもグラミングループと自動車リサイクル事業のソーシャルビジネスカンパニーの合弁会社を作ることに正式に合意。教育事業においても、ソーシャルビジネスプログラムをユヌス氏と共同開発し、今年中に提供していくという。

 奈津美さんはしみじみと語る。

 「物やお金を得て幸福だと思う人はまだいますが、社員には、自分が満たされるから幸せじゃなくて、何かを与えて、自分が幸せを感じられる人間になってもらいたい。これこそが最高の幸せだと思う」

 「家族主義」は日本的経営の代表例であり、海外からは不思議がられるという。それは行き過ぎれば滅私奉公、そして公私混同となり、「ブラック企業」と指摘されてしまう。同社の取り組みが現在の規模を超えて実を結ぶかどうか。注目していく必要がありそうだ。

 (フリーライター 上本 洋子)(PRESIDENT Online)