がん発見に線虫の嗅覚利用 尿1滴、ローコストで高確率 20年の実用化目指す

線虫によるがん検査実用化を目指す九州大助教の広津崇亮さん
線虫によるがん検査実用化を目指す九州大助教の広津崇亮さん【拡大】

 尿1滴、1回数千円でがん検診を可能に-。九州大助教の広津崇亮さんは、体長わずか1ミリの線虫に尿の臭いをかがせるだけで、がんを高確率で発見する低コストの検査法を開発した。日立製作所と共同研究を進め、目指すは2020年の実用化。「生物には無限の可能性がある」と夢を膨らませる。

 線虫との出合いは、東大理学部生物学科4年の頃。指導教官に勧められ「面白そうな生物だ」と研究テーマに選んだ。連日徹夜で打ち込むほどの実験の虫で「失敗に見えて、見方を変えれば成功ということもあるのが実験の魅力」と説く。予期せぬ結果が新たな発見を生むと前向きだ。

 大学院に進学し、線虫の嗅覚の研究を始めて1年半後、有名な英科学誌ネイチャーに論文を発表できた。「線虫で何かできる」と胸が高鳴った。

 13年春に届いた1通のメールが転機に。犬の嗅覚を活用したがん検査法を研究していた佐賀県の医師からで、「検査に線虫を使ってはどうか」とあった。「犬より優れた嗅覚を持つ線虫なら簡単だ」と直感し、すぐ研究に着手。がん患者の尿に近寄り、そうでない人の尿から遠ざかる特性を見つけた。「一体、何が線虫を引き寄せるのか」。立ち上げたベンチャー企業で、メカニズムの解析を急いでいる。

 「誰もやったことのない実験で皆を驚かせたい」。その思いに突き動かされて25年余り。がん検診を身近にし、多くの人が受診しやすくなれば早期発見につながる。体長1ミリの相棒と見据える先は「がんのない未来」だ。