【安西洋之のローカリゼーションマップ】
ミラノ市内の高校に通う息子は、同級生数人と連れ立って寿司屋にたまに出かける。日本人の息子が呼びかけるのではなく、イタリア人のクラスメートたちが(日本でのラーメンに位置する)ピッツアを食べるように「今度は寿司を食べに行こう」と誘い合う。
友人たちがアニメや漫画を好きなわけでもない。柔道や空手を習っていて日本文化に親しみがある、ということもない。ごく普通の家庭でイタリアのライフスタイルを送ってきた子供たちだ。
9月30日-10月1日の週末の2日間、ミラノ酒フェスティバルが開催された。4年目である。会場で日本酒を試飲する多くの若い人たちを眺めていて想起したイメージは2つあった。
1つ目は、上述した学校の授業を終えて仲間たちと寿司を食べに行く高校生の姿である。数年もすれば、あの子たちが酒に興味をもってくるのは必然に思える。
2つ目は、この夏に東京・京都・大阪の街で見た、日本文化に何か引き込まれるよう彷徨い歩く外国からきた若者たちの姿である。
かつてあった「日本のサブカルチャーや伝統文化に嵌る変わった外国人」のイメージが完全に払拭されたとするのは早計だが、そのような人たちが和食に関心を抱き、日本を旅する主役ではもはやなくなってきたのは、はっきりしている。
それがためにイタリア市場での日本酒促進も、より高度な戦略が必要になってきている。