なぜ熱心に営業するほど客は離れるのか 間違った教育を受けた「売れない営業マン」 (2/2ページ)

画像はイメージです(Getty Images)
画像はイメージです(Getty Images)【拡大】

 「自分の扱う商品がそこまでお客様のプラスになるとは思えない」と考えている営業マンもいると思います。しかし欠点のない人間などこの世の中にいないように、欠点のない商品もまた存在しないのです。

 一方で、多い少ないは別として、どんな商品にしてもそれを持つことによるメリットと、その商品がないことで被るデメリットが絶対にあります。営業マンは「その商品があることの喜びと、それがないことの恐怖」の両方をお客様にお伝えしなければならない。そこさえはっきりさせてあげれば、お客様は必ず買うのです。だからまずはお客様にとってのメリットを語ること。商品説明などは二の次でいいんです。

 バブル崩壊直後に、とあるメーカーに売れ残っていたマンション販売を依頼されたときのことです。後方は山、前方は海、買い物の便はなしという物件で1年経過しても5戸しか売れず、社員が「なんでこんなところに建てたんでしょうね」とつぶやいていました。私はこのマンションを立て続けに27戸売ったのです。買い物の便が悪くても、駅から遠いのは足腰の鍛錬になり、通勤が遠いのも読書の時間になる。自然の宝庫で眺めはいい、空気はきれいで子供の教育にも申し分はありません。そんなメリットに加え、賃貸のデメリットもお伝えしました。家賃をどれだけ払い続けても持ち家でないと自分のものにはならない。来場者にそうやって「メリットと恐怖」を訴え続けたところ、あっという間に売れたのです。変えられない条件を嘆くより、いいところを探し、自信をもって伝えればいいのです。

 商品のデメリットはあえてお伝えする必要はありません。自転車屋さんが、「自転車は雨の日は濡れますよ」と言うでしょうか。軽自動車の営業マンが、わざわざ「軽は大きな事故がおこったら即死ですよ」と言うでしょうか。お客様だって、デメリットもあることは承知のうえで買おうとしているのですから、メリットを強調するだけで十分なのです。

 ヒューマンリレーションズ代表取締役、営業セミナー講師 加賀田 晃

 1946年、和歌山県生まれ。小学校4年生から新聞配達を始め、出会う人すべてに新聞勧誘をしたことが営業の原点に。17社で営業を経験、契約率99%を記録。85年より「加賀田式セールス」研修を開始、3万人以上にノウハウを伝授。著書に『営業マンは「お願い」するな!』など。

 (ヒューマンリレーションズ代表取締役、営業セミナー講師 加賀田 晃 構成=長山清子 撮影=澁谷高晴)(PRESIDENT Online)