司馬遼太郎さんの未公開書簡 「作家になった」手応えと自信つづる

 「竜馬がゆく」などの歴史小説で知られる作家、司馬遼太郎さん(1923~96年)が40歳のころに担当編集者に宛てた未公開の書簡1通の内容が明らかになった。新作で得た自信などが率直につづられ、後の「国民作家」への飛躍を感じさせる貴重な資料だ。

 書簡は昭和39年8月6日付で、新潮社の当時の担当編集者だった谷田昌平さん宛て。送付してもらった自作短編集「鬼謀(きぼう)の人」(同年7月刊)について原稿用紙1枚に書かれている。谷田さんが平成9年に神奈川近代文学館(横浜市)に寄贈した資料に含まれていたが、存在はほとんど知られていなかった。

 書簡で司馬さんは、この短編集を「すきな作品集」と記し「作家になった、という気持がしています」と達成感を吐露。「ですから、いつもめんどうで、先輩たちに本を送らないのですが、(略)送っていただきませぬか」と続けている。

 35年に「梟の城」で直木賞を受けた司馬さんだが、当時は代表作の「竜馬がゆく」「国盗り物語」もまだ連載中だった。文芸評論家の清原康正さんは「幕末変動期の作品を収めた『鬼謀の人』には大村益次郎や河井継之助ら後の代表作の主人公が登場する。短編の名手から長編作家へ変わっていく過渡期に、自らの“鉱脈”を見つけた手応えや自信が感じとれる」と話す。書簡は町田市民文学館ことばらんど(東京都町田市)で開催中の「没後10年 編集者・谷田昌平と第三の新人たち展」で初公開されている。