脱サラでビストロ成功、東大卒53歳の戦略 4年連続ミシュランも安泰じゃない (1/7ページ)

ビストロアンバロンの両角太郎オーナー
ビストロアンバロンの両角太郎オーナー【拡大】

 東京・西麻布の「ビストロアンバロン」は、4年連続ミシュランガイド掲載中の人気店。オーナーソムリエの両角太郎さんは、東大卒、MBA取得、外資系金融機関で活躍という「超」がつくビジネスエリート。頭脳派が飲食開業に描いた夢、感じた喜び、そして厳しい現実を語ってくれました--。

 クビになって、考えたこと

 --ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント、モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信など、外資系金融業界に長く勤めていた両角さん(当時44歳)に転機が訪れたのは、ビストロ開業の1年前、2008年11月のことでした。まず、開店に至った経緯を聞きました。

 リーマンショックでクビになったんです。慌ててヘッドハンター10人ほどに連絡しました。半数は会ってくれましたが、残り半数は「半年間は職がないと思うから、勉強するなり遊ぶなり、時間を有効に使って」と言って、会ってもくれませんでした。

 同じようにリストラされた連中と飲みに行くなかで、1カ月もしないうちに「これまでと違うことをやろう」と思い始めました。サラリーマンは21年もやったから、宮仕えじゃなく起業して。何をやるかと考えたとき、もともと食べることが好きで、自腹で好きな店に行き、食べ手としてはそれなりに知識も経験もあり、ワインやチーズの資格も持っていたので、食の世界でいこうと決めたんです。

 選択肢としては、3つありました。1つ目が経営コンサルタント、2つ目がフードライター、最後が(飲食店を開業して)現場に立つこと。コンサルの場合、マクドナルドのような大クライアントはマッキンゼーやボストンコンサルティンググループのやる仕事ですし、僕自身がビジネスの対象として興味がない。一方で、小さなクライアント相手では、経験もあるし、役に立てるだろうけど、お金がない人からお金はもらえない。以前、ボランティアで飲食店開業の手伝いをしたことがあるのですが、1カ月ビッシリやって「仮に報酬を支払うとしても10万円」と言われました。それではビジネスにならない。ライターは取材先の店とのパイプを考えると、調子のよい記事しか書けない。そう考えると、一番面白いのは現場だなと。

 サラリーマン時代には、自分が現場に立って飲食店をやるなんて、考えもしませんでした。本業があったうえで店のオーナーになり、好きな酒を置いて、そこに客として訪ね、食事を楽しむ、ときに接待にも使うというようなイメージはあったのですが。

いける!絶好調のスタートだったが…