【著者は語る】「日本一わかりやすい海外M&A入門」


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 □JPリサーチ&コンサルティング顧問・杉山仁氏

 ■成功率改善対策を提案 国富増大にも寄与

 この2~3年、日本企業による海外企業買収が急増しており、大型海外M&A(企業の合併・買収)が毎日のように報じられています。海外M&Aには華やかなイメージがありますが、大々的に発表したM&Aが全て成功するわけではなく、買収後しばらくして失敗に終わっているケースは枚挙にいとまがありません。日本企業による海外M&Aの成功率は20%程度といわれています。

 私は三菱銀行(当時)勤務時から現在まで、海外M&Aに累計25年間携わってきました。案件発掘から買収後経営まで、全ての過程を海外の現場で自ら直接体験することができました。この経験をもとに、日本企業が海外M&Aで失敗する原因を探り、その対策を提案したのが本書です。

 失敗する原因は、(1)日本人は基本的に性善説で他人を信用しやすいため外国人につけこまれる。買い手の日本企業は海外の売り手の説明をそのまま信用してしまい、性悪説に基づいて徹底的に調べることをしない(2)日本企業には海外M&Aの全プロセスを熟知した人材が少ないため進め方やステップごとのリスク対策について基本知識が乏しい。弁護士や会計士は自分の専門分野をアドバイスするにとどまり、M&Aディール全体を客観的にアドバイスする専門家が少ない(3)日本企業の意思決定の特徴として、一旦決まると社長以下全社で目標に向かって突進するため歯止めがきかず、適切なリスク対策や撤退の検討ができなくなる。特に社長主導案件の場合、買収の実現が自己目的化し、リスク対策が十分になされないことが多く、買収後の失敗に直結する-などです。

 そこで次の対策を提案しています。(1)日本と海外とでは文化が異なることをまず認識して社内で海外M&Aの知識レベルをアップし、実行にあたって専門家頼りにならない(2)買収候補先につき、買収前に徹底的にバックグラウンドスクリーニング(背景調査)を実施する(3)社長や事業部の影響力が及ばない、海外M&A経験の豊富な専門家を外部より社内M&Aアドバイザーとして招き、判断にあたって独立した意見を聞く-。こうすることにより、日本企業の海外M&Aの成功率は著しく改善すると思います。日本企業による海外M&Aの成功は国富の増大にとっても重要な要因です。(1350円 金融財政事情研究会)

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【プロフィル】杉山仁

 すぎやま・ひとし 1949年生まれ。72年一橋大学卒、三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。米英で11年間勤務し、海外M&Aに従事。2001年転出後、大手企業投資ファンドと上場事業会社で買収後経営と海外M&Aに携わる。海外を含む投資先企業の会長や取締役を歴任し、海外M&Aに加えて内外の子会社経営や買収後リスク対応の経験が豊富。現在、M&Aリスクコンサルティング会社であるJPリサーチ&コンサルティング顧問。