「なるほど、日本企業は低いはずだ」 働く人の幸福度をはかる“たった12の質問” (4/5ページ)

 有能な社員ほど辞めないという状態になる

 こうした山登りのロードマップに従って、社員が質問に対して高い点をつけるように風土を改善していけば、業績も上向き、社員の離職率も低くなります。しかも、有能な社員ほど辞めないという状態になるでしょう。気をつけなければいけないのは、「キャンプ2」や「キャンプ3」といった高地での質問には肯定的でも「ベースキャンプ」や「キャンプ1」など低地での質問に否定的な場合です。ベース項目がきちんと整備されていなければ、一見うまくいっていても、もっといい条件があれば、転職する可能性が高いでしょう。

 筆者は、2017年2月に米国のギャラップ社で開かれた5日間の上級ストレングスコーチ講座に参加しました。この講座はエンゲージメントとも密接な関連のある内容になっています。受講者は全部で14名。私以外は、すべて米国人で、大手企業の人事管理職、大学教員、非営利団体の幹部などが参加していました。参加者13名が属する組織すべてで、「Q12」が導入されているのには驚きました。米国では、「Q12」がいま最も注目度の高い組織活性化対策となっているのです。

 先に日本企業のエンゲージメントの低さを指摘しましたが、ギャラップ社によればグローバルでエンゲージメントの高い企業は13%しかありません。また、「自分の強みにフォーカスして仕事をしている人は、そうでない人より6倍高い確率で仕事に満足」し、「自分たちの強みにフォーカスして仕事をしているチームは、そうでないチームより12.5%高い生産性を上げている」という結果も出ています。

 参加者たちは今後、「Q12」によって組織のメンバーの強みを促進する環境を整えていきたいと語っていました。トランプ政権の登場で米国は分断され、混乱を深めているように見えましたが、「Q12」を活用し、多様性や一人ひとりの個性を重視し、強みを活かしていこうとする企業が多いことに心を強くしました。

 日本企業はかつてチーム力が優れていると言われましたが、終身雇用が崩壊した現在、結束力が弱まっています。「Q12」のようなツールを使い、個人のエンゲージメントを大切にしてこそ、またチーム力が復活することでしょう。

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