予算の管理ではアクシデント発生 “PDCAを回せ”と指示する管理職は無責任 (6/6ページ)

 一方、経営環境に大きな変化があるなら、それを考慮に入れた慎重な計画設定が必要になるのである。PDCAサイクルとは、PDCA(J)Pサイクル、つまり、是正措置をとった後に、次の計画を設定する前に計画前提が前期と顕著な違いがあるかどうかを判断(Judge)した後に、次の計画を立てるものなのである。判断(J)のプロセスを欠いたPDCAサイクルは、不毛である。

 例えば、前期に想定した為替レートから今期の為替レートが大幅に上振れないし下振れすることが予想された場合を考えてみよう。そう判断するなら、計画前提が前期とは異なることになり、新規の計画設定にあたっては、為替が影響するすべての要因を考慮に入れないといけなくなる。

 もっともらしい言葉が、ビジネスの世界では満ちあふれている。これらの言葉が実は経営を混乱させている。「横展開せよ」とか「愚直に取り組め」なども危険な言葉である。部下の自主性と創造性は極めて重要だが、上司の明確な指示や良い意味での介入がなければ、管理者の期待する(あるいは、期待を超える)成果は得られない。

 日本語は他の言語との比較で、極めてハイコンテクスト(多義的に理解される)な言語である。そのことを十分理解した上で、適切な言葉を選択し、使用する必要があるだろう。

 加登 豊(かと・ゆたか)

 同志社大学大学院ビジネス研究科教授(神戸大学名誉教授、博士(経営学))

 1953年8月兵庫県生まれ、78年神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了(経営学修士)、99年神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年同大学院経営学研究科研究科長(経営学部長)を経て12年から現職。専門は管理会計、コストマネジメント、管理システム。ノースカロライナ大学、コロラド大学、オックスフォード大学など海外の多くの大学にて客員研究員として研究に従事。

 (同志社大学大学院ビジネス研究科教授 加登 豊)(PRESIDENT Online)