「精神腫瘍科」の設置増加 がん患者と遺族の心癒やす (2/3ページ)

埼玉医科大の大西秀樹教授(左)と石田真弓講師
埼玉医科大の大西秀樹教授(左)と石田真弓講師【拡大】

 遺族外来では、まず遺族の話を聞き、問題を把握する。鬱病を発症していると診断されれば投薬治療も行うが、ほとんどはカウンセリングを中心とする精神療法で、遺族の話に耳を傾けることが多いという。また、一般の外来のほかに、石田講師が中心となって年に4回程度の集団療法なども行っている。

 ◆傷つく言葉に注意

 受診の対象は、がんで身内を失った遺族に限っているが、年間20~30人が受診。その9割は、別の医療機関で治療を受けていた患者の遺族だという。訪れる遺族の中には、1回の受診で問題を解決できる人もいれば、長期にわたり通院している人も少なくない。

 遺族の中には、周囲の何げない言葉に傷つき、遺族外来を訪ねてくる人も多いそうだ。とくに遺族を傷つけるのが「なぜ、病気に気がつかなかったのか?」という問いだ。がん患者を看取った6割の遺族が聞かれた経験があるという。

 遺族は「私が至らなかったせいではないか」と自分で自分を責める気持ちになりやすい。そこに「なぜ気づかなかったの?」と尋ねるのは、自責の念を強めてしまう。「がんでも自覚症状がない人もいれば、小さながんが次々に転移してしまうような場合もあります。早期に発見ができなかったのは、決してご家族のせいではありません」と大西教授は強調する。

 ◆ただ、聴くだけで

 ほかにも「あなたがしっかりしないとダメ」「気持ちの整理はついた?」「あなたより大変な人はいるのよ」といった言葉は、励ますためにかけたつもりでも、逆に遺族を苦しめてしまうという。「遺族が必要としているのは“誠実な関心”です。周りの人は、詮索や励ましよりも、ただそばにいて遺族の言葉に耳を傾けるだけでいいのです」