バーテンダーが教えてくれたサービスの醍醐味 どれだけ深い層で心情を理解し合えるか (1/3ページ)

【安西洋之のローカリゼーションマップ】

 先日、都内の小さなバーに行った。

 日本でサラリーマンをやっていた20代、バーによく通った。バーテンダーが酒にまつわる欧州文化のうんちくを傾け、客はカウンターでそれを聞きながら雑談するような小さな店だ。通い馴れた店はいろいろとあったが、30代にイタリアに住み始めてから、それらから完全に足が遠のいた。

 自分自身が欧州文化のなかで生活していると、バーテンダーが如何に欧州の表面的なところをなぞっていたのかがよく分かったので、そのような場に行く気が失せたのだった。ただ、ホテルのバーのようにバーテンダーが「煩しくない」ところでは相変わらず酒を呑んできた。

 たまに街中のバーを訪ねるようになったのは、この7~8年だろうか。自分自身がバーテンダーの語りを適当に聞き流せる年齢になったのもある。「いや、そうじゃないでしょう!」とむきにならない(まあ、いつもではないが)。

 さて、先日の都内のバーのオーナーであるバーテンダーはウィスキーに凝っている。棚一面のウィスキーだけではなく、扉のある下の棚にも(自宅にも!)沢山コレクションされている、という。

 その彼がとうとうとスコットランドの畑や樽の話をするのだが、ふとした時に質問をしたら、40歳の彼は人生この方、一度も海外に出たことがなく、パスポートを作ったこともない、と分かった。

秘蔵のウィスキーを味わえる客とは