滋賀医大、骨肉腫のがん幹細胞の維持を担う「タンパク質」特定 再発・抑制に期待

 滋賀医科大(大津市)は、茶野徳宏准教授がイタリアのボローニャ大学と進めていた骨肉腫の共同研究で、がん細胞を作り出している細胞の活動を支えるタンパク質を特定したと発表した。1月に論文が米国のオンライン科学雑誌に掲載された。このタンパク質を阻害することで、がんの転移や再発を抑えることが期待できるという。

 がん細胞を作り出している細胞は「がん幹細胞(かんさいぼう)」と呼ばれ、がんの転移や再発の原因とされる。通常の抗がん剤などで取り除くことは難しく、治療のネックの1つになってきた。

 茶野准教授らが特定したのは、がん幹細胞の活動に不可欠とみられる「RAB(ラブ)39A」というタンパク質。正常な細胞にはほとんど現れず、がん細胞やがん幹細胞でみられるタンパク質という。

 正常な細胞と骨肉腫の細胞を比較し、約2万種類の候補の中からがんに関係しているとみられるタンパク質を約10種類まで絞り込んだ。その後、培養実験や動物実験などで、RAB39Aががん幹細胞を維持していることを突き止めた。

 マウスの背中の右側に通常のがん幹細胞を、左側にRAB39Aを阻害したがん幹細胞を移植した実験では、左側での腫瘍の発生率が下がった。がん幹細胞の活動が衰えたためとみられる。

 今後、RAB39Aを効果的に阻害する手法を確立させることで、治療薬に応用できる可能性があるという。茶野准教授は「骨肉腫を『治るがん』にしていきたい」と話す。