上司への愚痴も 「砂漠のキツネ」の人間くさい実像 「ロンメル回想録」新訳の完全版刊行 (1/2ページ)

 第二次大戦の北アフリカ戦線で活躍し、「砂漠のキツネ」の異名を取ったドイツ陸軍の将軍、エルヴィン・ロンメル(1891~1944年)。その回想録の新訳『「砂漠の狐」回想録 アフリカ戦線1941~43』(大木毅訳、作品社)が刊行された。これまで同書の邦訳は抄訳版しかなく、前大戦の欧州戦史を知る上で欠かせない基礎文献の“完全版”となる。

 ロンメルは第二次大戦初期のフランス侵攻戦や北アフリカ戦線で前線指揮官として大戦果を挙げ、独軍史上最年少の50歳で陸軍最高位の元帥に昇進。「ナポレオン以来」と評された巧みな戦術と騎士道を重んじた振る舞いで、敵国の米英からも高く評価されるなど世界的名声を得た。しかし大戦末期の44年10月、同年7月に発生したヒトラー暗殺未遂事件に関与したとされ自殺を強いられた。

 ロンメルは死の直前までアフリカ戦線を中心にした回想録を執筆しており、その草稿は50年に遺族や旧部下らにより『憎悪なき戦争』と題し独語で出版された。一方、同草稿は英国の軍事評論家、リデル・ハートが手紙などとともに独自に編集、英訳した53年刊の『ロンメル文書集』にも収録され、国際的にはこちらの方が広く読まれてきた。日本でもこのリデル・ハート版が71年に『ロンメル戦記』(読売新聞社)として訳出されている。