働き方改革、影響説明なく対案も遅れ 政府と野党の論戦上滑り

 今国会の焦点となっている働き方改革をめぐる政府と野党の論戦が上滑り気味だ。政府は推進する労働時間の規制緩和策について具体的な影響を説明しておらず、野党側は「残業の上限が青天井になる」と反発、徹底抗戦の構えだ。ただ野党側も対案の作成作業は遅れ気味で、長時間労働の是正という核心について明確な主張は見えない。

 ◆「過労死促進だ」

 「裁量労働制は長時間労働を増やす。過労死促進法じゃないか」。9日の衆院予算委員会。質問に立った希望の党の山井和則氏が加藤勝信厚生労働相に詰め寄った。

 裁量制は実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ決めた分だけ働いたとみなす仕組み。政府は今月中に国会提出する働き方改革関連法案にこの制度の適用業種拡大を盛り込む方針だ。

 山井氏は、法案が成立すると今は対象外の営業職にも適用される可能性があると主張。影響を受ける労働者の人数をただしたが、加藤氏は「数字で申し上げるのは難しい」と詳しい説明を拒んだ。

 法案に含まれるもう一つの規制緩和が「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」。年収1075万円を超える一部専門職を労働時間規制の対象から外す新たな枠組みだ。加藤氏は高プロに関する別の議員の質問にも「年収1000万円超の給与所得者は全体の約3%。そこから対象業務などで絞り込まれる」と述べるにとどめ、具体的な規模を明らかにしなかった。

 ◆セット販売と一緒

 法案には、労働界が悲願としている残業時間に罰則付きの法定上限を設ける規制強化策も含まれる。野党側は2つの規制緩和策と、方向性が食い違う規制強化策が同じ法案にまとめられることを「悪徳商法のセット販売と一緒だ」(希望の党・大西健介氏)と批判。さらに民進、希望両党は働き方改革に関する合同会議を立ち上げ、対案の提出を目指し共闘する。

 しかし野党側も規制強化策では独自色を打ち出せていない。政府は連合と経済界も参加した「働き方改革実現会議」での議論を経て残業の上限を単月で100時間未満と決めた。希望の党関係者は「上限の線引きは労使の合意を踏まえて政府案を踏襲するしかない」と明かす。

 両党は連合が16日に開く会合で骨子案を示そうと急ピッチで立案を進める。

 だが議論を主導するのは分裂前の民進党で労働部門を担った一部の議員だけ。政策を共有するのに時間がかかり、作業は遅れている。

 これとは別に立憲民主党も独自案の国会提出を目指す。長妻昭代表代行は「終業と翌日の始業の間に一定の時間を置く『勤務間インターバル』を取り入れる」と明言しているが、ある議員は「まだ議論すら始まっていない」とこぼし、党内の温度差をにじませる。

 共産党は規制緩和策の撤回を要求し、強化策についても「月45時間を上限にすべきだ」として政府案に反対している。