住宅各社、人材確保へ「基礎工事」 現場の効率化や若手職人育成、福利厚生拡充の動き (3/3ページ)

積水化学工業は大型ロボットを導入した生産集約化や工場内の空き空間の有効活用により、建築現場の負担減を実現した=奈良市のセキスイハイム工業近畿事業所
積水化学工業は大型ロボットを導入した生産集約化や工場内の空き空間の有効活用により、建築現場の負担減を実現した=奈良市のセキスイハイム工業近畿事業所【拡大】

 ■将来的には施工期間短縮も課題

 積水ハウスは「教育訓練センター・訓練校」を通じ、技能者の育成を進めている。昨年には寮の新設やリフォームを実施し、受け入れ人数を増やした。

 また、女性大工の育成を推進するため、女性専用エリアも導入した。旭化成住宅建設を運営する旭化成ホームズは、1人で構造体の組み立てや電気配線、左官工事などを賄える多能工の育成を重点課題に掲げる。

 働き方改革も現場で広まりつつある。大和ハウスは4月から新規に着工する現場に、完全な休養日に当たる「休工日」を導入。原則、土日と連続して休めるようにして、2021年4月には完全週休2日とする方針だ。積水ハウスは施工現場での女性監督の登用に力を入れる。

 ピーク時の1980年には93万7000人いた大工が15年時点では6割減の37万2000人となった。それでも対応できてきた理由の一つが、柱や梁(はり)などの部材を工場であらかじめ加工するプレカットが主流になり、現場での作業負荷が減ったためだ。しかし、これから多くの高齢大工がリタイアする。全国建設労働組合総連合(全建総連)の推計によると、30年にはわずか20万人程度になる可能性もあるだけに抜本的な対策は待ったなしだ。

 このため工場での生産比率拡大に伴う現場作業の効率化や若手職人育成、福利厚生の拡充による人材確保といった、各社の事業戦略に拍車がかかるのは必至。将来的には現場に補助ロボットなどを投入することで、施工期間の短縮化に取り組むことも、重要な経営課題になることは確かなようだ。(伊藤俊祐)