ヘルスケア

「後見人」になれる親族はわずか3割 親が認知症になると銀行口座は凍結される (5/5ページ)

 「“終活”がブームになっていますよね。死を前向きにとらえ、より良い最期を迎えようという動きですが、その一方には、できるだけ迷惑をかけずに世を去りたいという発想もある。私も終活セミナーを見学したことがあるのですが、印象に残ったのは『エンディングノート』のつけ方指導です。エンディングノートには希望する葬儀の形式のほか、預金通帳や保険証書の保管場所などを書くことが多いのです。いま“終活”が注目されているのは、高齢社会を迎え、残された家族の金銭的負担が身近な問題になっているという背景があるからだと思うんです」

 エンディングノートに必要な情報を記して家族に伝えるのは、死に限らず認知症で介護を受けることにも役立ちます。とはいえ、終活は家族に迷惑をかけたくないという気遣いのできる人の自発的な行為であり、子が勧めるものではありません。

 ▼親とお金の話をしないとお金が“奪われる”

 では、どうしたらいいのでしょうか。

 「センシティブな問題ですし、親子の関係性によっても異なるので非常に難しいですが、やはり親御さんが元気なうちに思い切って、もしもの時のお金のことを話しておくべきだと思いますね。兄弟がいれば全員の意見を集約して、親御さんに伝える。たとえばこんな風です。『この間、兄弟で集まったんだけど、母さんの話が出たんだ。いいトシになったなって。母さんは元気だし、俺たちもいつまでも元気でいてほしいと思っている。でも、トシがトシだし突然重大な病気になる可能性もあるわけじゃない。そんな事態と想定した時、お金のことでもめたくなと思ったわけ。母さんの財産が今いくらあるかは知るつもりはないけど、もしもの時に対応できるように、預金通帳とキャッシュカード、その暗証番号を書いたものをわかる場所に置いておいてほしいんだけど、どう思う?』。こうした切り出し方をお勧めしたいです」(Iさん)

 高齢の両親に「お金の話」をすることに躊躇する気持ちはよくわかります。でも、その作業を放置しておくと、いざというときに親がせっせと貯めていたお金を銀行に“奪われて”しまうことがあるのです。

 子供に迷惑をかけたくない、と考える親は多いはずです。だからこそ、腹を割った親子会議を早めに開いておくことが重要となるのです。

 (ライター 相沢 光一 写真=iStock.com)(PRESIDENT Online)

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