【著者は語る】渡部恒郎氏「業界メガ再編で変わる 10年後の日本」


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 □日本M&Aセンター執行役員 業界再編部長・渡部恒郎氏

 ■規模拡大ではなく「ビジネスの進化」

 今、日本のさまざまな業界で、大再編時代の到来を予感させる現象が起きていることをご存じでしょうか? 優良ベンチャーの経営者が伸び盛りの自社を大企業に売却し、成熟した企業がベンチャーと組んで業界再編を仕掛けるケースが増えています。IT×ITのような同種の組み合わせから、IT×成熟業界という異種の組み合わせの資本提携に変わり、成熟業界が新しいテクノロジーによって刷新されているのです。

 建設、農業、ホテル、タクシーなど10年以上同じものやサービスを提供する成熟業界は、M&A(企業の合併・買収)での集約化やIT企業との提携が進むほか、事業のコンセプトを定義し直すことで、業態自体が進化していく可能性もあります。

 業界再編というと、同業種でくっつき、経営規模を大きくすることと誤解されている方もいるのではないでしょうか。しかし経営者が真に目指しているのは、規模の拡大ではなく「ビジネスを進化させること」です。

 1990年代、メジャーリーグと日本プロ野球の総売り上げは約1500億円程度で同等でしたが、メジャーリーグだけが急成長を遂げ、現在では5倍以上の差がついています。メジャーリーグは、業界全体の成長のために球団間の垣根を取り払い、放映権やネット配信などで手を組む経営戦略を選択して成功しました。

 企業や業界における古くからの慣習を打ち破ることで、事業は進化させられるのです。

 国内企業数は減少の一途をたどっています。中堅・中小企業数は、2007年で420万でしたが、27年には350万程度まで減ることが予想されています。ただ、バブル崩壊後およびリーマン・ショック後の問題先送り型経済政策によって、今も生き残っている企業の中には生産性の低い企業が多く含まれます。

 そもそも日本には似通った事業内容の企業が多すぎるため、業界再編の進展は必ずしも悪いこととはいえないでしょう。都市銀行はかつて13行もありましたが、業界再編が進むと、現在の大手4行体制で誰も不自由しないことが分かっています。

 本書では、これまでの業界再編の波を踏まえながらこれから起きる波を予想しています。複数業界の上場企業経営者へのインタビューも交えながら、業界の10年後を予測しました。(1512円、東洋経済新報社)

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【プロフィル】渡部恒郎

 わたなべ・つねお 業界再編M&A第一人者。京都大学経済学部在学中に入社したベンチャー企業でナンバー2となり、関連会社を設立し、取締役に就任。卒業後、日本M&Aセンターに入社。同社でM&Aプレーヤーとして、2008~15年までの累計で最多の成約実績を誇る。代表的な成約案件であるトータル・メディカルサービスとメディカルシステムネットワークのTOBは日本の株式市場で最大のプレミアムがついた(グループ内再編を除く)。17年、日本M&Aセンター最年少執行役員に昇格。