【著者は語る】山本強氏「その土地を買ってはいけない」


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 □地盤ネットホールディングス社長・山本強氏

 ■安全性を重視した真実の価値伝える

 従来の不動産価値は「駅近」などの利便性から、値付けされている傾向がありますが、近年の大地震や自然災害リスクに対し、地盤会社の社長しか伝えられない真実の価値を伝えるため、この本を出版しました。

 当社は、地盤の見える化という消費者目線のサービスを展開してきました。2016年8月にリリースした、災害リスクが簡単にスマートフォンで分かる「じぶんの地盤」アプリは、ダウンロード数が17万件を超え、消費者の安全に対する意識の高さがうかがえます。

 アプリから派生した、地盤の良い場所だけを集めた不動産サイト「ジバングー」は立ち上げから1年になりますが、累計掲載物件1500件のうち、既に500件が成約済み。「安全な場所」への移住を望んでいる会員の方は7000人にも上り、現在は物件が足りないくらいの状況です。

 日本の全世帯数の70%が災害リスクの高いエリアに住んでいるとも言われ、3500万世帯が「安全」を求める潜在層であると考えております。

 また、空き家の増加が社会問題となっていますが、空き家物件の80%は「良い地盤」に該当するという統計も出ています。働き方改革を推進する企業が増える中、これまでの都市中心の生活から、利便性だけでない、安全な住まいや暮らし方を求める方が一層増えていくものと思われます。当社では空き家バンクからの情報掲載も開始し、今後は空き家オーナーと安全な場所を求めるユーザーをマッチングするCtoCビジネスへの発展を見込んでいます。

 当社では、リスク分散の一環で本社機能をベトナムのダナンに移しています。ベトナムはプレートの内部にあり、なかでもダナンは地盤が良い丘陵地が多いことが特徴です。日本だけでなく世界の「ジバングー」を今後は紹介していくつもりです。

 本書では、こうしたサービスの由来ともなった各種観点から、「土地の中身」を見分けるコツを紹介しています。

 良い地盤への住み替え促進の一方で、簡単には引っ越せない方もいると思います。そうした方には「微動探査」サービスで、地震災害への対策を提案しています。家を守ることは、家族の安全だけでなく資産を守ること。本書を通じて土地の本当の価値を知り、生活に役立てていただきたいと思います。(821円 幻冬舎)

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【プロフィル】山本強

 やまもと・つよし 1966年、大阪府生まれ。証券会社、ハウスメーカーなどを経て、2008年に地盤解析専門会社、地盤ネット(現・地盤ネットホールディングス)を設立。代表取締役に就任。12年、東証マザーズ上場。地盤・住宅業界に革命を起こす異端児として注目を集めている。地盤を通じて、日本の不動産価値のパラダイムシフトを提唱。今後は、世界の安全な場所における事業を展開していく。