しかし、電気ショックを少し強めにすると、マウスたちは道を覚えるどころか、正しい道を探すこと自体をやめてしまいます。そしてチャレンジすることをやめてしまったマウスたちの胃には潰瘍が認められたそうです。
人間の世界でも、強過ぎる叱責は逆効果と言えるでしょう。心身の健康を損なうリスクはもちろんですが、「自己効力感」を低下させるデメリットは計り知れません。「自己効力感」とは、カナダの心理学者アルバート・バンデューラが提唱した概念で、ある状況下で適切な行動を自分が成し遂げられるか見通せる感覚を指します。
「叱りの度合いが適切なら大丈夫」と思うかも知れませんが、どの程度が適切なのかは受け手によるところが大きく調整は難しいのです。
五月病は環境の変化によって心身ともに疲れがたまった状態ですので、叱るという指導はマイナスにしか働かないと思ったほうがよさそうです。
では褒めて育てる上司が多用する「頑張れ」「なんとかなるよ」といった励ましはどうでしょうか。次に、意外な落とし穴と対処法をご紹介します。
◆「頑張れ」という言葉の功罪
「頑張れ」という言葉は励ますときの定番フレーズです。励まされて嬉しいと感じたことがある人も多いと思います。
しかしショックな出来事があった直後だと「頑張って」という言葉を素直に受け止めることができずに、不快になってしまうというケースもあります。
《励ましが不快感に繋がる例》
・「精一杯頑張っているのに、これ以上どう頑張ればいいのだろう」と怒りを感じる。
震災で被災した人たちを対象にした調査でも「頑張ってという言葉が辛かった」という意見が出ています。