【書評】『英米哲学入門 「である」と「べき」の交差する世界』一ノ瀬正樹・著


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 ■考えることの面白さ伝える

 副題は聞き慣れない言い回しだが、私たちの日常社会のことだ。

 身の回りの事実は「◯◯である」、ルールや因果関係は「××であるべき」と言い換えられる。例えば、駅のホームの光景。電車の扉が開く(事実)と、降りる人が先(ルール)だ。扉が閉まり駆動音がすれば(事実)、車両が動き出すはず(あるべき因果関係)。この世界は「である」と「べき」の積み重ねでできている。

 そんな「世界のあり方」をロックやラッセルなど英米哲学を題材に平易な言葉で説明しつつ、読者に思索を促し、考えることの面白さを伝える。哲学入門の良書だ。(ちくま新書、1058円)