がん患者の気持ちを解説、接し方のヒントに 体験者ならではの悩みや考え方

 ■通院治療

 家族や友人、同僚ががんになったら、どうコミュニケーションを取る?

 乳がん体験者であり、がん患者の就労支援などを業務とする会社の代表を務める桜井なおみさん(51)が「あのひとががんになったら-『通院治療』時代のつながり方」(中央公論新社、1404円)を著し、周囲の人に知ってほしいがん医療の現状や、患者ならではの悩み、考え方の癖などを解説している。

 がんの治療はかつて長い入院が当たり前だったが、近年は薬の進歩などにより入院が短縮し、社会生活を送りながら通院で治療を受ける期間が長くなった。その分、患者と周囲の人がコミュニケーションに悩む機会が増えたのではないかと桜井さんは分析する。

 「ちょっとしたボタンの掛け違いで互いが傷つかないように」と、家族、友人、同僚が、それぞれの立場でできる患者のサポート方法などを紹介したほか、患者に向けても、情報の集め方や周囲への伝え方、相談の仕方などを助言した。

 自身の失敗も披露。がんと診断されたとの連絡を友人や顧客ら約300人にメールで一斉に送ったが、返事はほとんどなかった。相手がどう受け止めるか考えられなかった、と反省する。

 患者が「言われてうれしい言葉」として挙げるのは「いつもあなたのことを思っている」など、寄り添う気持ちがこもったもの。傷つくのは「かわいそう」との同情など。「頑張れ」は、相手との関係やタイミングで大きく変わる「もろ刃の剣」だとした。

 早期発見かを安易に尋ねるのは良くない。「発見しにくいがん、完治が困難ながんもある。まずは本人の話をよく聞いて」と呼び掛けている。