「好き嫌い」をやり取りしよう まず1人きりでビジョンを考える (1/3ページ)

【安西洋之のローカリゼーションマップ】

 『デザインの次に来るもの』を書き、ロベルト・ベルガンティの『突破するデザイン』を監修してから、日本での講演会やセミナーでデザインについて話すことが多くなった。特に「意味のイノベーション」に触れる。モレスキンは1997年、ノートを「あなたが作る本」として売り出した。これが意味のイノベーションの1つの例だ。

 意味のイノベーションは最初に市場のユーザーの声を拾うのではない。他者の意見を聞くのは、問題解決型のイノベーションに向いている。意味のイノベーションでは方向が逆だ。外から内ではなく、内から外である。

 つまり企画する本人が1人でビジョンを考えるところからスタートする。愛する人に花束を贈るとき、何の花が良いかを愛する人に聞かない。驚きがないといけない。それと同じだ。ビジョンを固めていくプロセスで、議論する相手の数は増えていくが、最初は1人だ。ビジョンの深さは、このような過程で得られる。

 講演会やセミナーでこの内容を話すと、一定数、決まった反応がある。

 「1人だけで考えて良かったのですね!」「1人だけで考えて良いのですか?」とコメントや質問が返ってくる。

 1人で考えることに罪悪感がある、あるいは劣等感がある。そう想像せざるを得ない反応である。何かを考えるにはグループ作業、との固定観念がとても強い。もちろんグループ作業自体が悪いのではなく、1人で考えることとグループ作業の両方が必要なのだが、1人で考えるのが「悪役」を一手に引き受けている。

 どうしてなのだろう?

1人での思索につきまとうマイナスイメージ