背景には、少子化で学生減が見込まれる中、社会人経験者を増やしたい養成校側の事情もある。小論文を試験科目に取り入れるなどし、配慮している。日本看護学校協議会の遠藤敬子事務局長は「社会人受け入れ枠を増やす動きが目立つ」と話す。
女性が働く場は広がったが、安定した収入を得て働ける仕事は多くない。看護師は国家資格を取得し、家庭と両立しながら働ける数少ない仕事の一つ。若い看護師に比べ、夜勤などの勤務をこなす体力や技術習得のスピードなどで不利な面がある一方、異業種での仕事や介護、みとりを身近に感じた経験などが生かされるとの期待もある。
「決断してよかった」
神戸市の総合病院のリハビリ部門で働く看護師(44)は10年以上事務職として働いた後、35歳で看護学校に入学。事務職で評価されないことが不満で、「一生食いっぱぐれのない仕事を」と転身した。
最初は年下の看護師からきつく指導されるのがつらかったが、接客やパソコンのスキルが生かされる場面が増え、今はリーダーを任されている。「自分に向いている仕事。決断して良かった」
閉鎖的になりがちな医療現場と患者のつなぎ役としての期待もある。研究職から助産師になり、4月から大学で教える近藤祥子さんは「医療現場では当たり前でも患者には分かりにくいといったこともあり、第三者的な目は必要。多職種が連携する場面でも活躍できるのではないか」と話した。 ◇
■あらゆる経験生かされる
京都大の任和子(にんかずこ)教授(看護学)の話「看護師の仕事は人との関わり方が非常に大事で、あらゆる経験が生かされる。年を取れば身近に病気になる人も増え、患者や家族の立場に立ちやすくなる。社会人経験者が現場に増えることを歓迎したい」