【高論卓説】伊能忠敬に学ぶ50歳からの人生 思い切った攻めで偉業も可能に (3/3ページ)

富岡八幡宮の境内に建つ伊能忠敬像
富岡八幡宮の境内に建つ伊能忠敬像【拡大】

 最後に統率力である。測量は1日40キロも移動しながら、夜にデータ整理、晴れれば天測を行うという強行日程で行われた。隊員の士気と健康を保つのは、容易ではなかったろう。

 忠敬が若年時に測量隊長に抜擢(ばってき)されても、史実のように測量遠征を実行できたとは思えない。プロジェクト遂行には老獪(ろうかい)さも必要なのだ。

 今や、50代は思い切った攻めの人生を始める良い機会である。30、40代は家族に対する責任が重いので、なかなか思い切った決断ができない。

 ところが今や寿命が延びて、病気にさえならなければ80歳近くまで元気で仕事ができそうだ。それならもう一仕事できる。ITの発達で、新分野の勉強もはるかに容易になった。どうせやるなら、世の中で本当に重要だと自分が思うことを正面から攻めてみたいものだ。

【プロフィル】戎崎俊一

 えびすざき・としかず 理化学研究所戎崎計算宇宙物理研究室主任研究員。東大院天文学専門課程修了、理学博士。東大教養学部助教授などを経て1995年から現職。専門は天体物理学、計算科学。