【サスティナブルにっぽん~鹿児島県】名水を守り親しむ「唐船峡そうめん流し」  柳沼愛子

唐船峡のそうめん流しには大勢の人が訪れる
唐船峡のそうめん流しには大勢の人が訪れる【拡大】

  • 回転式そうめん流し器
  • そうめん流し発祥の地、唐船峡
  • 湧水の上に建つ川上神社
  • 柳沼愛子

 水の入った容器の中でぐるぐる回るそうめんを、周囲から箸を伸ばしていただく「そうめん流し」。竹などの樋に水と一緒にそうめんを流す「流しそうめん」とは別物だ。その回転式そうめん流し発祥の地が、薩摩半島の南端、鹿児島県指宿市にある「市営唐船峡そうめん流し」。そこには、古くから受け継がれてきた環境資源とともに生き、未来に伝えようとする人たちの姿がある。

 そうめん流しに使う唐船峡京田湧水は、九州最大の湖、池田湖の伏流水とされ、昔から地域の飲料水、生活・灌漑用水に活用されている。湧き水の上にある川上神社は水難・水害からの守護神として、地元の人に親しまれてきた。

 環境省「平成の名水百選」に認定された、まろやかなおいしさ、1日約10万トンという豊富な水量、年間通して13度前後に保たれる水温といった唐船峡京田湧水の特長を生かそうと、1962年に始まったのが、そうめん流しだった。

 最初はテーブルに竹の樋を埋め込んだものにそうめんを流す「流しそうめん」。しかし、竹のカビなどに悩まされたことや「そうめんを流す人も一緒に食べられるように」という当時の助役・井上廣則さんのアイデアで、回転式そうめん流し器が生まれた。湧水を約10mの高さまでポンプで引き上げ、落下時の水圧で流れを起こしているため、モーターは使っていない。

 めんつゆは地元山川産の鰹節や北海道産の利尻昆布をふんだんに使った手作り。九州特有の、少し甘めのつゆと冷えたそうめんののど越しがかもしだすおいしさは格別。

 「古くから指宿を支えてきた湧水を後世に伝えるため、環境に配慮しながら活用を図りたい」と話すのは支配人の井手久成さん。 毎年約19万人、市の人口の5倍近い客が訪れるという。最近は唐船峡を訪れるアジア圏からの旅行者も増え、中国のテーマパークに回転式そうめん流し器が納入されたそうだ。名水とともに生き、守ろうとする人々の思いは、国境も越えようとしている。

【サスティナブル】

1992年の第1回地球環境サミットで初めて提唱された「持続可能な発展」という考え方。以後、国や産業の発展には自然環境への配慮が不可欠であることが世界的に広く浸透している。本コラムでは、サスティナブルな社会を目指す日本各地の取り組みを紹介する。

              ◇

 やぎぬま・あいこ 元テレビユー福島アナウンサー。現在はTVCMに出演する一方で、webサイトコラムも執筆中

【局アナnet】 2004年に創設された、全国の局アナ経験者が登録するネットワークサイト。報道記者やディレクターを兼ねたアナウンサーが多く、映像・音声コンテンツの制作サービスを行っている。自社メディア「Local Topics Japan」(http://lt-j.com/)で地方のトピックス動画を海外向けに配信中。