ローカリゼーションマップ

「文句」は吊り橋を渡るようなもの? 聞き手との間でゆらゆら揺れて (3/3ページ)

安西洋之

 だが、繊細でありたいとは心の中で思うし、心がけたいとも願うが、冷や汗をかくにはこと欠かない、というのが普通の人間だ。

 やはり何か言いたくなった時は、いくつかのことを忘れ、あるいはそれらのいくつかの点の優先順位を意図的に下げ、言ってしまうものだ。「だってさっぱりしたいのだもの」との弁解を用意して。それで後で、穴があれば入ってしまいたくなる心境になる(こともある)。

 ここで教訓を書いておこう。

 およそ舌禍とは、その言葉の意図するところがコンテクストにフィットしなかったがゆえに、生じるものだ。「あれを自宅の居間で家族を前に言っているならいいけど、あの人の前で言うとはねぇ。言う相手を間違えたのだよ」との説明で殆どは納得をえることができる。

 こんな比喩はどうだろう。

 発言というのはゆらゆら揺れる吊り橋を渡るようなものだ。どうしても歩けば揺れるのだ。そして下を見れば怖い。だが歩いて渡るしかない。でも暴風雨の中で渡ってはいけない。

 あっ、ちょっと違うな。まあ、今回はこれ以上迷路を進まないことにする。(安西洋之)

【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)

安西洋之(あんざい ひろゆき)上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『デザインの次に来るもの』『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』、共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)フェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih

ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。

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