【著者は語る】ミサワホーム創業者・三澤千代治氏『三澤千代治の遺言』


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住宅づくりは「人間とは何か」探求すること 大学在学中から住宅にかかわってきました。結核で2年間の療養生活を送るなか、木質パネル接着工法を考案し卒業後に事業化しました。ミサワホームを創立し、2004年にミサワホームを辞しましたが、今に至るまで住宅一筋の一本道を突き進んできました。気が付けば住宅にかかわって55年、80歳になりました。節目と考え、「遺言」のタイトルで住まいへの思いをつづりました。住宅産業のこれから進むべき道への何らかのヒントになればとの思いも込めています。

 私がいま思うのは「住宅産業はこれまで本当に住まいを求めるお客さまの豊かさのために存在してきただろうか。住宅企業だけが大きくなっているのではないか」ということです。住宅を建てたお客さまが豊かになってもらわないと困ります。豊かさとは、本音の話として資産形成ができるということです。その一例としてライフステージを8回に分けての住み替えによる資産形成を提案しています。社会に出て親元から独立してのアパート住まいから悠々自適のケア付き住宅までの住み替えをする中で着実に資産形成をしてほしいのです。

 具体的には、超耐久性のある200年住宅、健康に良い住宅、値上がりする土地の選択、6つの住環境を満たす住宅、子育て住宅、木造住宅、住文化のあふれる住宅-など、資産価値に優れる住まいづくりをすることによって初めて、資産形成が実現できるのです。

 ちなみに税制面で日本の住宅はほぼ20年で資産価値がなくなります。寿命の短い住宅づくりを国が奨励しているようなものです。これでは、国富としての資産など増えるはずがありません。「住宅寿命の短さが40年間で500兆円の国富としての資産を失わせた」とのデータもあります。

 私は「古い正しいことを新しい方法でやる」が持論です。そのために住まいは文明50対文化50でなければならない。先進技術の文明だけではだめです。人間が生きていくうえで必要な文化が欠けているからです。住宅づくりはつまるところ、人間とは何かを探求していくことにほかならないと思っています。

 人生100年時代、お客さまの資産形成に目を向けた住まいづくりをいまこそスタートすべきだと考えています。(2160円、創樹社)

                   

【プロフィル】三澤千代治

 みさわ・ちよじ 1938年、新潟県生まれ。60年、日本大学建築学科卒業。67年、ミサワホームを設立し、4年後に株式上場、当時最年少の上場会社社長として話題に。2003年、ミサワホールディングス名誉会長、04年退任。同年、ミサワインターナショナル株式会社を設立、代表取締役社長に就任。主著に「情断大敵」(ベストセラーズ)、「本物志向」(講談社)、「土地神話、土地新話」(東洋経済新報社)、「2050年の住宅ビジョン」(プレジデント社)など。