【サスティナブルにっぽん~長崎県】南蛮ボード、雷模様…伝統鍛冶に新たな彩り 中村直美

第3回長崎市都市景観賞奨励賞を受賞した南蛮ボード。長崎市内にある写真館・月光スタジオの蚊焼鍛冶看板
第3回長崎市都市景観賞奨励賞を受賞した南蛮ボード。長崎市内にある写真館・月光スタジオの蚊焼鍛冶看板【拡大】

  • 蚊焼鍛冶で作った第一号南蛮ボードは福岡県のワイン工場の看板(巨峰ワイン提供)
  • 蚊焼鍛冶で作った街路灯(長崎市提供)
  • 山口良仁さんが考案した雷模様(e-ながさきどっとこむ提供)
  • 蚊焼包丁と軍艦島型ペーパーナイフ(長崎市提供)
  • 中村直美

 「長崎手打刃物」。全国的な知名度が高いとはいえないが、長崎県の伝統工芸品である。長崎市、大村市、島原市など良質な水と土が豊富な地域で生産され、切れ味はもちろん、刃持ちの良さを示す「粘り強さ」も持ち、高い評価を得ている。

 しかし、戦後、需要の低迷や後継者不足の影響で、現在長崎県手打刃物組合に加盟している業者は12にとどまる。

 そんな中、伝統技術に新たな価値を加え、次世代に伝えようと、鉄製の看板・モニュメント「南蛮ボード」製作や新しい模様包丁づくりに挑んでいるのが、長崎市の蚊焼鍛冶、山口鍛冶工場の山口良仁さんだ。

 元々、近隣の鍛冶業者が大正時代に西彼杵郡三和町蚊焼に集められ、蚊焼鍛冶と呼ばれるようになった。その後、平成の大合併で三和町は長崎市に編入されたが、戦前約20あった鍛冶屋も現在は3業者しかない。

 代表的な南蛮ボードは、商店の軒先にある金属製の看板だ。扱っている商品が一目で分かるように図案化され、モニュメント風になっている。欧州の古い町でよく見かけられ、メルヘンの世界に入り込んだようで、日本人旅行者に人気がある。

 山口さんが南蛮ボードを製作するきっかけになったのは、1988年、当時の三和町長が「欧州にあるようなお洒落な看板が蚊焼鍛冶でできないか」と蚊焼鍛冶組合に相談したことだった。最初は、四角の板に店名が書かれた普通の看板を想像し、「何を言っているんだ?」と思ったそうだ。

 しかし、町長に欧州の看板が載った本を見せられたとたん、「これは鍛冶屋の仕事だ!」と製作意欲がかき立てられた。翌年早くも山口さんが作った蚊焼鍛冶の南蛮ボード第一号が福岡県のワイン工場に設置され、91年には市内の写真館の看板が第3回長崎市都市景観賞奨励賞を受賞した。

 やがて、蚊焼鍛冶組合として受注するものも増えてきたが、バラの飾りを付けた傘立てがテレビで全国放送された際は注文が殺到し、約3カ月間ひたすら傘立てを作った、と山口さんは振り返る。今年は、世界新三大夜景に選ばれた長崎の夜景を一望できる稲佐山の街路灯を長崎大と共同で製作した。これには他の鍛冶工場も協力している。

 山口さんは包丁作りでも新たな試みに取り組んだ。一般的な和包丁の模様「墨流し」以外のものを作り出せないかと、インドのダマスカス鋼の模様をヒントに15年前に「雷(いかづち)」模様を作り出した。雷模様が作れるのは山口さんと息子の大仁さんだけ。ただ、敢えて特許を取っていない。「この模様を出せるならご自由に」という言葉には、2年間の試行錯誤の末に生み出した技術への自信とともに、鍛冶技術の発展を願う心もありそうだ。

 匠の技とチャレンジ精神がが、長崎の街と伝統技術に彩りを加えていく。

【サスティナブル】

1992年の第1回地球環境サミットで初めて提唱された「持続可能な発展」という考え方。以後、国や産業の発展には自然環境への配慮が不可欠であることが世界的に広く浸透している。本コラムでは、サスティナブルな社会を目指す日本各地の取り組みを紹介する。

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 なかむら・なおみ 長崎文化放送、NHK長崎を経て、現在、FM NACK5でニュースアナウンサー、各種司会として活動中。

【局アナnet】 2004年に創設された、全国の局アナ経験者が登録するネットワークサイト。報道記者やディレクターを兼ねたアナウンサーが多く、映像・音声コンテンツの制作サービスを行っている。自社メディア「Local Topics Japan」(http://lt-j.com/)で地方のトピックス動画を海外向けに配信中。