中には自力で病院に通えない患者を家族や介護職員が送迎するケースもある。山川さんは、災害の混乱の中で患者が透析を受けられないようなことがないよう、周囲の人々が十分に配慮してほしいと訴えた。
多くの腎不全患者は高血圧や糖尿病の薬を服用している。薬を避難先で速やかに入手するためにも、「お薬手帳」を持っておくことが必須だ。透析後の目標体重(ドライウエート)を覚えておくと、別施設でもよりスムーズに透析を受けられるという。
◆お薬手帳忘れずに
糖尿病患者も、薬の調達や体調維持が難しい災害弱者といえる。日本糖尿病協会(東京)は「糖尿病患者さんの災害への備え」と題して各種のマニュアルをウェブサイトで無償公開している。
マニュアルでは普段と違う避難生活での対処法を紹介。糖尿病の薬を飲んでいる場合は、食事が取れなければ服用を休み、食べられれば食事量に応じて用量を加減することなどを指摘している。
インスリン注射が必須の糖尿病患者向けには、別途個別のマニュアルを公開し、インスリン注射を中止せずに容量を加減するよう勧めている。
日常とかけ離れた避難生活の中で薬を調整するのは容易ではない。平時から主治医や薬剤師と相談し、各自の病状に合わせた“ルール”を知っておくべきだという。
インスリン注射が必要な患者が持ち出すべき物として、注射セット▽経口薬▽血糖自己測定器と消毒用の綿-などと、お薬手帳を挙げ、普段の治療内容、合併症の検査結果などの記録もあった方がいいとしている。
近年、避難所には医師や看護師、薬剤師らの支援チームが駆け付けるシステムが整った。腎臓病や糖尿病に限らず、心身の不調や心配事があれば、医療者か避難所管理者に遠慮なく伝えることが大切だ。